イアソン pixiv。 #FGO #イアソン(Fate) アトランティスを越えた先、従兄弟同士語り合う

#イアソン(Fate) #Fate/GrandOrder その奇跡を彼女は望んでいた 前

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「ケンタウロスの馬蔵」 ノウム・カルデアの廊下で。 つい先日召喚されたばかりのアキレウスは確かにそう聞いた。 まぎれもなくそれはケイローンを侮辱した言葉であり、アキレウスを激怒させるに充分値する言葉であった。 廊下を走り抜け、侮辱した男の元へ行く。 兄弟子だ。 兄弟子が侮辱したのだ。 ケイローンと話していたらしい兄弟子……イアソンの胸ぐらを掴み、アキレウスは彼を睨んだ。 「アキレウスッ……」 「イアソン、あんた、今先生を侮辱したな」 ケイローンの声が聞こえないような、そんな雰囲気のままアキレウスはギリギリと歯を軋る。 「……だからなんだというのだ」 「テメェッ……!」 「簡潔でわかりやすい授業だったさ。 ただ、"場所"のことを言っただけだ」 場所については、まあ、確かに。 と、ケイローン自身納得はしている。 だが、アキレウスは許せない。 「ヘラクレスがいなきゃ、なんにもできねぇお前が! 先生を! 侮辱するな!」 イアソンは何も言わない。 この手の言葉は聞き飽きているからだ。 実際、ヘラクレスの強さは本物だ。 ヘラクレス頼りと言われれば納得もする。 完全に完璧にヘラクレスにべったり、というわけでもないが。 聞き飽きてはいるが、不愉快に変わりはなく。 よく回る舌で思い付く限りの罵言を浴びせようと考え、口を開きかける。 だが、アキレウスが次から次へと叫ぶように暴言を撒き散らし、イアソンを壁へと追いやる。 「っ、」 「アキレウス、いい加減に」 「先生は黙ってくれ!!」 もはやバーサーカー。 誰の話も聞く気がない。 このままではケイローンも浮かばれない。 未だに殴り付けないのはなけなしの理性か。 とにもかくにも、と思ったが瞬間。 イアソンは、頬が破裂したような痛みに襲われた。 口の中が鉄臭く、じんじんと痛む。 我慢した方か。 と、思いつつ、イアソンはアキレウスを睨んだ。 そして、口を開いた。 「……そういえば前から思っていたんだが」 「あ"?」 それは、アキレウスにとっては火に油だった。 ケイローンですら閉口した。 「惚れた女の実兄の死体を辱しめたお前は、"祖父"そっくり、だったな」 [newpage] シュミレーターから帰り、ヘラクレスは何かを感じ取ったのか、のっしのっしと。 できるだけ急ぎつつ、廊下を歩いていった。 「ヘラクレス?」 何やら焦っていた。 マスターである立香はヘラクレスについていった。 共にシュミレーターにいたアスクレピオス、アタランテ、ヘクトールもついていく。 なんとなく、嫌な予感がしたからだ。 現場では、ギャラリーが少し。 エルキドゥが鎖でアキレウスを羽交い締めにし、ケイローンと超人オリオンがイアソンを抑えていた。 「な、なななななにごと!?」 「怪我人おおいに歓迎だが……」 狼狽える立香を尻目に、アスクレピオスが訝しげな顔をする。 「あ、マスター!」 「キャスニキ! なにが!?」 二人の間に入り、落ち着けと言っていた最古参に話を聞く。 「オレもよくはわからねぇんだよ! 廊下が騒々しかったから来てみると二人で殴り合いの大喧嘩! ケイローンも少し巻き込まれ! アキレウスを抑えんのに神性特攻持ちのエルキドゥを呼んだ! イアソンはとりあえず近くにいたオリオンに頼んだ! わけわかんねぇ!」 「詳細をありがとう!」 だが、原因は不明だ。 まあ、なんとなく。 なんとなくではあるがイアソンが地雷を踏んだか。 あるいはアキレウスがイアソンの気に障ることを言ったか、やったか。 「……ヘラクレスも浮かばれねぇなぁ、こんな奴に! いいように使われてよ!」 プツン。 何かがキレた。 立香には確かに聞こえた。 アタランテがアキレウスを叩く。 「……頭を冷やせっ!」 アタランテか? いや、違う。 静かに。 立香はイアソンを見た。 アキレウスに本気で殴られたのか、頬が腫れている。 イアソンの顔を、みるのを、立香は躊躇った。 「お前、今。 ヘラクレスを、ヘラクレスを侮辱したのか」 「イアソン」 オリオンがぐっ、と腕に力を入れる。 「お前だってケイローン先生を侮辱しただろ」 「イアソン! アキレウスも控えなさい!」 聞き分けのない教え子達に、ケイローンは叱るように声を出す。 「汝達は頭を冷やせ!」 アタランテも叫ぶが二人は収まる気配がない。 「オレの侮辱は許さない。 ……だが、アルゴノーツの侮辱は……ヘラクレスの侮辱は! もっと許さん!!」 「はい! お兄さん通ります!」 カン! と杖を叩く音がした。 途端、アキレウスとイアソンは力が抜けたように倒れた。 「……寝てるね」 エルキドゥが呟く。 花の魔術師マーリンが溜め息を吐く。 「やれやれ……。 ……これでいいかな?」 「ああ。 眠らせた方が早い」 どうやらヘクトールがマーリンを呼びに行ったらしい。 「イアソンは僕が診る。 アキレウスの方はサンソンに引き渡せ。 病室は別だ」 「アスクレピオス……」 「……僕もアルゴノーツだ。 ……あの船旅には、多少なりとも思うところがある」 ヘラクレスはイアソンを担ぎ、アスクレピオスと共に去って行った。 「……あ、エルキドゥ。 ごめんね。 サンソンのところにアキレウスを頼める?」 「お安いご用さ」 エルキドゥは鎖でぐるぐる巻きにしたアキレウスを担ぎ、去って行った。 「……オジサン、イアソンんとこに行くね」 「では、私は小僧のところに行こう」 「マスター」 「……まとめれてないね、ごめんね……」 キャスターのクー・フーリンに泣き付きそうになるのを堪え、立香はケイローンに事の経緯を聞いた。 ギャラリーのサーヴァント達は、立香を落ち着かせようと色々と励ましたりした。 [newpage] 「オレは謝らん。 絶対にだ」 「それは結構。 ですが、マスターから謹慎令が出ましたので、しばらくは安静に。 謹慎が解くまでの間はシュミレーター訓練も禁止ですので」 「……チッ」 「舌打ちするな」 ベッドの上でアキレウスは不機嫌な顔を隠さなかった。 サンソンが診た限りでは放っておけば完治するものばかりだったが、喧嘩相手が女神ヘラの加護を受けているということで油断は禁物だと判断した。 「姐さんも、あいつの味方か」 「……アルゴノーツの侮辱は、私への侮辱でもある」 「そんなつもりはっ」 「……」 「っ……」 アタランテに見つめられ、アキレウスはばつが悪いような顔をし、俯いた。 「……第三特異点の記録をみたか?」 「! ……ああ」 ちょうど、記録をみた後に聞こえた。 そう続けると、アタランテは溜め息を吐いた。 「ハァ……。 ……少し、アルゴノーツの話をしよう」 「いや、アルゴーの話は」 「冒険譚ではない。 ……私が、なぜ船に乗ったかだ」 「!!」 静かに、サンソンが茶を出す。 アタランテが短く礼を言うと、彼は微笑んだ。 「私も聞いていいのですか?」 「ああ。 たいした話ではないからな」 目を細め、アタランテは記憶を辿る。 口の上手い男が、己が最も忌み嫌う人種が、夢想を語ったのだ。 国について。 「言ったのだ。 理想郷のような国をつくると。 すべての民が満ち足りた、私が願う、すべての子供の幸福も組み込んだ国をつくると。 口八丁だ。 出任せだ。 そうわかっていた。 強い船員が欲しいのはわかっていた」 「じゃあ、なんで姐さんは……」 「……笑わなかったのだ」 「へ……」 「私の、非現実的な。 あまりにも夢物語な、世界への願いを、あの男は聞いてなお、笑わなかった」 大抵は嘲笑され、否定され、バカにされる夢物語を。 イアソンは真剣に聞き、笑わなかった。 「『私が国王となったら、子供も幸せな国にするとも。 ケイローン先生の授業よりもレベルの高い教育を行き届かせ、子供の幸せな声で満ち溢れるような、そんな国を』……私より、夢物語だと思ったさ」 そんな国をつくりたいから、力を貸してくれ。 そう言われた。 言われたならば、貸す他ない。 だからアタランテは船に乗ると決めたのだ。 「魂レベルで腐りきってはいるが、そんな国をつくりたいという奴の気持ちは本物だったのだ。 ……酒の席で、酔ったら必ず演説するように毎回言っていたからな」 「……」 アキレウスはカップを見つめる。 だから、父親も船に乗ったのだろうかと思いつつ、一口茶を飲む。 「ヘラクレスの、奴への感情は大きい。 第三特異点のように間違っている、とわかっていても味方したように」 それは、イアソンがはじめて。 ヘラクレスを人間として扱ったからだ。 対等な人間として接したからだ。 「……私は、叱るためにマスター達に付いた。 アルゴノーツの皆はなんだかんだあいつに甘いからな」 天然の人たらし。 それがイアソンだ。 彼の物語は、今も語り継がれる。 アキレウスは遠い記憶を漁る。 幼い頃、ケイローンに連れられアルゴー船の出航を見送ったことがある。 「……あ」 「? どうした」 あの時の、薄れた記憶。 今も霞がかっているが確かに覚えている。 あの時。 兄弟子は確かに、誇らしげな顔をしていたのだ。 (……あれは、本心じゃない イアソンはひねくれた性格だから。 だから、ああいう言い方をするのだと。 アキレウスはようやく気付いた。 ……許しはしないが。 「……にしても、ギリシャの英雄は友情を優先したがる傾向があるようですね」 サンソンが呟くとアキレウスは冷えた頭で少し考える。 「あー……。 ……まあ、時代もあんだろ」 とりあえず、謹慎が解けたら話を聞いてみよう。 そんなことを思いながら、アキレウスはカップの茶を飲み干した。 [newpage] 「オレは謝らんからな!」 「それは結構。 じゃあ寝てろ」 「言われなくとも!」 アスクレピオスに診てもらい、謹慎令が出たイアソンはふて寝した。 ヘクトールが困った顔で頬を掻くと、イアソンは溜め息を吐いた。 「ハァ。 ……お前には悪かったな」 「? なんのことですかな?」 「あいつに浴びせた暴言のなかに、お前を侮辱するものが混じっていた」 素直に謝るイアソンにヘクトールは驚きつつ、苦笑した。 「そうかい」 今更何をどう言われようが、死人なのだから意味などない。 二人の揺るぎない絆、とでも言おうか。 「にしても、アスクレピオスが進んでイアソンの面倒をみるなんてね」 「アキレウスより身体を理解しているからな。 それにいかんせん、あのクソ爺の孫だ。 いくらなんでもイアソンでは分が悪い」 「お前もそうだろうが」 イアソンがそう言うと、ヘラクレスが普段より険しい顔をした。 今のに他意はない」 何やら抗議したらしい。 イアソンが謝罪すると、ヘラクレスの顔が幾分か柔らかくなる。 「はは。 ……オジサンも英雄の括りに入れられてるけど、こういう仲間はいなかったからねぇ」 「仲間、といえばイアソンとお前はある意味仲間だ。 クソ太陽神の加護的な意味でな。 僕は少し違うから外させてもらうが」 皮肉混じりにアスクレピオスが吐き捨てると、ヘクトールは苦笑いをした。 イアソンは思い出すように 「そういえば、アポロン神の加護が与えられた時、お前顔が凄かったもんな……」 と言った。 するとアスクレピオスは乾いた笑みを浮かべた。 「ハハハハ。 ……それは無邪気に。 「……友情、か……」 「……そうだな。 ……イアソンは、ロクデナシだ。 クズだ。 人間として敬うに値しない、自分勝手な、あまりにも人間らしい人間だ」 「お前オレのこと嫌いだろ!」 「いいや?」 フッ、と笑い、アスクレピオスは腕を組む。 「むしろ好ましいが? 患者としてはこの上なく良い患者だ。 すべての愚患者に見習わしたいくらいにな」 「バカにしてるだろぉぉ!」 アルゴノーツ。 ヘクトールはついこの前の、酒の席でのことを思い出した。 賢王が「羨ましいものよなぁ……」と、羨望の眼差しを向けたのだ。 酒の席で。 なぜかイアソンに群れていき、そこで騒ぐアルゴノーツをみて。 メディアとの破局は、まあ様々な要因 主に女神 のせいだが、イアソンを知れば知るほど。 人間としてはどうしようもない奴だが、そのカリスマは本当なのだと思い知る。 「アキレウスには謝罪しなくてもいいが、ケイローン教授には謝罪しろ。 どう考えても、一番の被害者だ」 「むっ……。 ……そうだな」 「そういえば、なんで喧嘩してたの?」 まるで子供に諭すような言い方だったが、イアソンは普通に。 ケロリとヘクトールに答えた。 「教授に授業の感想を聞かれたから、答えた。 それだけだ」 言い方が悪かったというのが手に取るようにわかったヘクトールは、ひきつった笑みを浮かべた。 実際イアソンは『簡潔且つ簡単なものばかりでした。 ケンタウロスの馬蔵でしたけど』と言ったのだ。 否、言ってしまった。 ケイローンはイアソンの性格をよく知っているので何も言わなかった。 彼なりの賛辞だとわかっているからだ。 「まあ、お前さんはマスターにも謝らんとな」 「わかっている!」 「お静かに」 ベシッ!とアスクレピオスがカルテをイアソンの頭に叩きつけた。 ヘラクレスは懐かしむようにそれを見ていた。

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#FGO #イアソン(Fate) イアソンの話

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奇跡が起きたら彼女(プレイヤー)は尊さでタヒぬ。 アトランティスで死にました。 二部で一番好きです。 王道の仲間との冒険ストーリー最高でした。 そして最後の礼装で死んだのは私だけではない、絶対に。 ツイッターとかで流れてる奇跡を起こしたくてどうしてか成り代わりものになったのは謎です。 しかも成り代わり主の状況説明で終わって本題に入ってないという。 リアルが忙しめですが、早めに後を上げれたらと思います! 誰も見てなくても私が見たいんだ……新生アルゴノーツが集まるところが……(ネタバレ)。 こういうやつの場合タグってどうつけるんでしょう……。 続きました。 拝啓、同世界に生きるすべてのFGOプレイヤーオタクの皆さん。 LB5ことアトランティスのストーリーはクリアなされましたか? 私はしました。 して泣いた。 なんだあの愛の物語は! 今まで特に強い思い入れの無かったオリアルを一日に何度も検索するようになっちゃっただろ! バーソロミューやドレイクさんもカッコ良すぎだよイケメンがぁ……。 千代女ちゃんは明るくて安心しました。 ほら、初対面の時もうちょいシリアスだったし? あとはアキレウス〜〜お前そういう所が周囲から怒りとか買ってるんだぞ! おもにエルバサとかエルバサとかエルバサとか! パリスちゃん思ったより口調荒くて男の子ぽくて可愛かったです。 あとアポロン様お前喋るんか〜〜い! アスクレピオスに軽率に話しかけてボコられる未来しか見えないぞ。 なんなの、二人共。 私はイアソンに、泣いた。 私の中のイアソンは、一部の3章に出てきたやられ役。 ラスボスに踊らされてた中ボス。 そこから、終局特異点での発言で少し株が上がった、それぐらいだった。 でも、でもさ。 手のひらクルーと言われても仕方ないけど、あんなのカッコ良すぎるじゃん。 主人公たちを不安な気持ちにさせないためにずっと痛みを我慢し続けたとかさ、何あれ。 そして留めの礼装で、私はアルゴー号の船員になったのである。 手のひらクルー上等だよ!! どうせみんな7章の時は新規ウルクの民になったりしただろ! あんなのみたらアルゴノーツになるしかないでしょ!? てか無理。 礼装の文章。 は〜〜〜〜(クソでかため息)。 その後はまあトゥイッターや支部で神々のイラストや小説や考察を読んで「尊い……」とかなってた私です。 その中でも一番「それな〜〜!!」というのは、あれだ。 イアソンが宝具を使う時にアトランティスメンバーが来てくれるやつ。 本気でレア演出で入れてほしいと思った。 マジで入ったら私は見た瞬間形容しがたい声をあげて崩れ落ちます俺のサイドエフェクトがそう言ってる。 まあ、正直それは無理だろうと分かっている。 なので私が望むのはイベントシナリオで新生アルゴノーツがわちゃわちゃしてる奴です! 運営(と書いて神と読む)様、待ってるのでお願いします!! はい敬具! [newpage] 追伸。 推しはみたいものであって成りたいものではありません。 みんなコンマの世界ではい理解になるよ。 理解出来たでしょ!?!? な、な、な! なんと! 特に死んだ覚えもないのに気付いたらイアソンになってました〜。 なんでだよ!!! しかも座とか神様の世界で「お前成り代わってな」みたいな説明もなく! 気付いたら召喚されてましたよ! ア ト ラ ン テ ィ ス に な ! ! おっかしいだろ!! オチが魔神柱なオケアノスには行きたくないけどだからってアトランティス?? 英霊にするならちゃんと順序踏ませて頂けます? 例えるなら最初の村周辺のスライムが何故か魔王城周辺に放り出されて周囲は高レベルモンスターしかいないみたいな状況だよ!! ああ、だめだためだ。 落ち着け、深呼吸。 深呼吸……。 ゆっくり状況を理解しよう。 私はどう見てもイアソンですありがとうございましたぁ! あの、一部からは股間が寂しいと言われていたイアソンですよ。 オケアノスの服装実装してあげてよと言われてるイアソンです。 でも成った感想としては、この身体、人間の肉体じゃなくてエーテル(?)体だからか、別に寒くないってことだな。 知りたくなかった〜。 そして次、能力。 ……どうやら、イアソンの生前の記憶(デフォルト)と、能力はちゃんとあるらしい。 記憶に関しては不思議な感じだ。 思い出そうとすれば出てくるけど、親しみはあるのに始めて見るみたいな矛盾した違和感がプツプツしている。 そう言えばここがアトランティスであるって辺りも、召喚と同時に理解したから、その辺りまではデフォルトの付属品なんだろうか。 よくここがどこで何で召喚されたかも分からないようなサーヴァントいるけど……。 まさかこれが転生特典とか言われたら私は泣くぞ?? 身体の方は軽く動かしてみたけど、まあ一応動く。 とはいえ、そもそも生前のイアソンはアタランテも言ってたけど戦闘に出るタイプではないっぽい。 あくまで、戦闘能力はサーヴァントだから普通より高い、ぐらいだろう。 ……さて。 そんな風に一度は怒りだったりで大騒ぎした私だったが、悩んでいる時間はさほど無かった。 ポツンと立ち尽くしていた私を、メディア(リリィの方)が見付けて、はくれサーヴァントの集まりに連れて行ったからだ。 確かに利は圧倒的に敵側にあった。 でもこちらだって一人や二人どころではない人数が集まっていて、動いていた。 だれも負けなど考えず、ただ先を見据えて動いていた。 動いていたのは一つの集まりだけでなくて複数あったらしく、そちらにはケイローンたちも居るらしい。 まるで疑似カルデアのような英雄の数々に、イアソンらしく(不思議と、イアソンのような発言が出来ているのは良かったのか……)後方に居続けながら、完全に忘れていた。 どうして、アトランティスでのイアソンが彼らの戦いから脱落したのか。 「クソっ、このままじゃ!」 「あれが、アルテミスの矢なのか……?!」 空から、星が落ちてくる。 そう錯覚するしかないほどのエネルギーの塊が、私たちに向かって真っ直ぐと、落ちてくる。 それを見たら、理解した。 あれに勝つなんて無理だ。 あんなのに叶うわけはない。 イアソンの皮を被った一般人でしかない私は、何も対抗策を考えることも出来ずに空を睨んでいた。 メディアが、私の名を読んで、腕を引っ張る。 魔法が展開したのは見た。 私を守ろうとしているとぼんやり理解しながら、なんて無駄なことをと思った。 だった、どれだけ保護結界の範囲を狭めて強度を補強しても、あれは防げないだろう。 えっ、とメディアが声を漏らす。 そのまま、メディアをアルテミスの矢から隠すような大勢になる。 無駄だろうな。 私だってそう思うよ。 メディアの張った結界のほうが、まだ意味のある行動だった。 (でもさイアソン、ヤンデレが過ぎるとしても、私は彼女の献身を知っちゃってるから、無視出来なかったんだよ) イアソンは結構体格が良い。 だから、メディアの身体はすっぽりと収まってしまった。 轟音が近付く。 もう数秒だって時間は無いだろう。 こんな危険を何度も味わいながら、ぐだ子たちはレイシフトしてたんだと思ったら、本当に凄いなと思った。 やっぱり彼らは主人公なんだ。 主人公。 黒い巨体が、私達の居る船を大きく揺らした。 「ヘラ、クレス」 英雄が、立ち上がっていた。 こちらを振り変えることもせず、ヘラクレスは真っ直ぐにその光へと突き進んだ。 僅かにヘラクレスが押されて傾く。 その瞬間、私は咄嗟にヘラクレスの方へと手を伸ばした。 勿論自分にだって使えるし効果があるものもある。 でも、使用先を指定する前提である時点で、それらは己のためのスキルではない。 終局特異点で彼(オレ)は言った。 「1を10にするより、10を100にするほうが強い」と。 結局、あとで思っただけで。 この時はただ、ヘラクレスが何かをしようとするならば、手助けをしなければならないと思ったのだ。 光が消えた。 ヘラクレスは立っていた。 甲板に立っていたサーヴァントたちが、力を抜いた。 私はメディアを抱えたまま、もはや辛うじて生き残っているとしか言いようのない状態のヘラクレスに声をかけた。 「二発目が来る!!」 空気が凍った。 空を見上げれば、それが嘘ではないことは分かった。 つい先程、ヘラクレスが受けきった光が、再び私達に向かって落ちてきていた。 戦場に慣れていないものも、そもそも本来のイアソンや今腕の中にいるメディアのように、前線に出ないものだっている。 彼らの中の数人が、己の宗教の神に何かを祈っているのが見えた。 私はと言えば、空の落ちる星に視線を取られ、動く事も出来ずにいた。 それなのに。 ヘラクレスは立っていた。 立ち上がって、人より大きな巨体で、星に向かっていった。 キャスターの誰かがヘラクレスの名を呼んで、魔術を使用しているのを、最早なんの力も持たない私は見ていた。 万全な姿だった先程とは違う。 今にも倒れても可笑しくはない、そんな姿。 それでも彼は立っていた。 強すぎる光が目を焼いた。 視界が黒に染まる中、私に分かったのは、私の宝具の一部として実体化させていた船が……アルゴー号が、衝撃に耐えきれずに崩れ落ちていったことだけだった。 それから、私は戦いから退いた。 マスターも居らず、クリノミアも使わない状態では、自力で新たなアルゴー号すら作り出せない。 酒はそれほど好きじゃない。 けれど、知らぬ間に最前線から脱落していたドレイクと共にハリボテの安寧を貪るのは……酷く楽で、絶望的だった。 [newpage] そんな私を海に再び連れ出したのは、主人公だった。 黒髪に青い目の少年が、いつの間にか身の回りの世話役に入り込んだコルデーと共に現れた。 この頃にはすっかりアル中で四六時中思考はボヤけていて、コルデーが薬を取ってくると島を出ていったのが物語の始まりだと思いあたったのはコルデーの帰ってくる数時間前のこと。 しかもそれに気が付いても何かしようという気持ちが起きず、そのまま酒を呑んでいたぐらいだ。 だから主人公が現れた時もボンヤリ会話をして、彼らが居なくなってから始めて……ああ、この世界の主人公はぐだ男なんだなぁ、なんて思ったのだ。 しかし主人公たちが神殿に行ったと聞いた瞬間、思考が晴れる。 イアソンの核が危険を感じ取ったのかもしれない。 そこから私は、アトランティスのストーリーをなぞり始めた。 私が必要以上に意図して彼らを連れて行く必要はない。 導く存在は何もイアソン以外にも沢山いた。 ヘラクレスたちと共にこの海を駆けていた時には無かった苦労もあった。 それ以上に船を下りてからは感じることの無かった仲間の存在は私の心を癒やしていたように思う。 何度も危険な目に合って、乗り越えて……ドレイクから譲り受けた船は、僅かに姿形は違うものの、確かに私のアルゴー号になっていった。 同じように、仲間たちは本当のアルゴノーツになっていったのだろう。 本来アルゴノーツにしか効かないはずの『友と征く遥かなる海路』の追加効果が効いてる気がすると最初に言い出したのは、アキレウスだった。 「なんか、そうとしか思えないほど調子が良いんだよなー」 そう言われてみると確かに調子が良いと他の奴らまで言い出して、私を見る。 しかし私だって知らないのだから説明なんてしようがない。 「気のせいだろ!」と叫んだ所で、通話でホームズとダ・ヴィンチまで割り込んできた。 「この船は元がなんであれ、今はアルゴー号だ。 そしてアルゴー号に乗っていた英雄たちが、アルゴノーツと呼ばれた訳だが……さて、船に乗る人間をたまたま乗っている者と、仲間と分けるのは誰かな?」 「それは…………船長が、決める……?」 ぐだ男がそう言って、ぐるんと全員の視線が私に注がれた。 むしろこちらがその推理に(??)と思いながら、あまりにスラスラと言うので「そう……なのかな……?」と納得しかけていたのだが、繰り返すが私は答えを知らないので答えようがない。 「…………なんだよ」 眉間に皺を寄せて視線を睨み返すのは誤魔化しだったが、その瞬間ぐだ男を中心としてその場の面々がへらっと嫌な笑い方をしたので私は叫んだ。 「その笑いを止めろ!!」 ワッ! と上がった笑い声と共に、主人公とアキレウスたちがじゃれてくる。 それをシッシッと追い払う私を、若干離れた位置でオリオンが笑っていた。 そんな一幕があったりして、ともかく航海は進んでいった。 コルデーがゼウス・クリノミアのせいで動かなくなって。 アテナ・クリノミアを取りに行った時に千代女が船から去って。 アキレウスがケイローンを引きつけるために去って。 バーソロミューが一同を島に送り届けた所で去って。 戻ってきたコルデーが再び去って。 時間を稼ぐためにマンドリカルドが去って。 最後の一矢になるためにパリスが去って。 オリオンが月を撃ち落とすために去って。 「ありがとう、イアソン!!」 ポセイドンを倒したぐだ男たちが、オリュンポスに向かうために去った。 残ったのは私達を育てていない、この世界のケイローン。 彼とぼんやりと会話をしているうちに……私は、座へと、帰った。 [newpage] 座に帰った私は、消えるでもなく漂っていた。 たぶんここは本物のイアソンの座なのだけど、そもそも私には何かを知覚するための力もない。 アトランティスという異聞帯の記憶のみが私を形作っていた。 イアソン(本物)も、座に流れ込んできた異物であるはずの私に手を出す気配もない。 どれくらいそのまま漂っていたか……時間を理解する力がないから分からないけど、ふと、座に空気が流れた。 それまで座という空間は何もない場で、風も吹いてなくて、私はほんの僅かな空気の動きで揺れていた、みたいな感じだった。 それが気付いたら何かの流れが吹いてきて、私は漂うではなく、流され始めた。 「オレは前線になんて出ない!」 それは、この場所に来て初めて聞いた、イアソン(本物)のものだろう声だった。 その直後、私の身体は力強く押し出された。 ああ、召喚されたのかと本能的に理解する。 アトランティスとは違う感覚。 パスが人間というより、機械的な何かとつながる。 これがカルデアの召喚か……。 脳裏に、黒い髪に青い目の少年が浮かんだ。 黒い服を身にまとった少年。 「この旅が終わったら、みんなを召喚して、また旅がしたい」そんな夢物語を星空の下でいった少年の姿が。 「セイバー、イアソン。 召喚に応じて参上してやった。 私は勇者であるがその前に船長だ。 ……いいか。 くれぐれも前線には出すなよ? 絶対に出すなよ? ………うん?」 「うっっわイアソンじゃん!!」 反射的に召喚のセリフを喋った後に感じた違和感から漏れた声は、明るい少女の声に遮られた。 んんん? と首を曲げる。 目の前に、明るい夕焼け色の髪の毛をした少女が、立っていた。 その横には見慣れた紫の少女もいる。 (んんんんん???) ぐるり、と周囲を見た。 万能の天才、レオナルド・ダ・ヴィンチ。 ロリじゃない。 白いカルデア戦闘服を身に纏う、夕焼け色の少女……ぐだ子。 (ま、まさか) 私はオタクである。 数多の支部産小説や漫画だって読み漁ってきた。 だからこういうのの察しは、良い方なのだ。

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#FGO #イアソン(Fate) アトランティスを越えた先、従兄弟同士語り合う

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食堂でひとり、コーヒーを啜る。 苦味と酸味のバランスが丁度良いそれは、生前は口にしたことが無かった代物だ。 かぐわしい香りが湯気と共にあたりに広がるが、口にする主の顔は陰鬱なものだった。 「あー…面倒、面倒すぎる。 これがキャスターやアーチャーだったらアスクレピオスとアタランテの奴にちゃちゃっと片付けてもらう、んだが…」 大きい溜め息をついて、目の前の黒いバインダーに挟まれた資料に目を向ける。 セイバー回覧板。 大きい字で書いてあるそれは、セイバークラスのサーヴァントに向けられたものであり、彼…イアソンも例外では無かった。 「第一オレはライダーとかランサーとか、もっと的確なクラスがあるってーの。 なんでセイバーなんだよ…」 ぶつぶつ文句を言いながら資料に目を通せば、素材のことやクエストのこと、そしてセイバークラス同士の鍛練の日程についてなど、事細かに記載されている。 鍛練などしたくはない、と顔を歪めていると、ふと前方に影が落ちた。 「イアソン、少しだけ良いか?」 目の前にいたのは濃い紫色の鋼鉄製のスーツに身を包んだ男、オデュッセウス。 イアソンの従兄弟でもある間柄だが生前は面識が無く、会うのはサーヴァントになってからだった。 「なんだ、オレは今忙しいんだが?」 「ははは。 なに、ほんの少しだけ話したらすぐ離席させてもらうさ」 イアソンの断りもやんわりと受け流し、椅子に腰掛け、机を挟んで向かい合う二人。 彼は整いながらも威厳のある顔立ちをしている故に、一見冷徹な印象を与えがちだがその物腰の柔らかさから、笑みを浮かべることが多い。 事実、今でも僅かな微笑を浮かべている。 そんな彼をちらりと見て、迷惑そうな声色でイアソンが言う。 「5分だ。 それ以上は話は聞かん」 「構わない。 ただ、聞き流すだけでも良い」 そしてまるで自分自身を落ち着かせるように一呼吸置いて、オデュッセウスが口を開いた。 「…迷惑をかけて、すまなかったな」 突然の詫びの言葉にも、何も言わず回覧板に目を落としながらコーヒーを啜る。 そんなイアソンの様子に、オデュッセウスは催促されているのだろうと察し言葉を続けた。 「俺はアルテミスの矢から逃れたものの、異聞帯の俺に捕まえられた。 そして敗北し消滅した。 その後、異聞帯の俺がマスターやお前達を相当追い詰めた…これはカルデアのデータベースで見た情報だがな」 異聞帯・アトランティスの海で、当初オデュッセウスはイアソン達と行動していた。 しかし襲いかかるアルテミスの猛攻により頼みの綱だったヘラクレスは十二の試練を使い果たし脱落、命からがら生き延びたサーヴァントはばらばらに散らばってしまったのだ。 この時に、イアソンとオデュッセウスも互いに行方が解らなくなった。 その後オデュッセウスは、単身で汎人類史のサーヴァント及びカルデアのマスターを探していたが、運悪く異聞帯の自分自身に見つかり捕らえられ、知識を引き出され、そして討たれた。 「俺にはアテナの加護があるが、それでも奴には及ばなかった。 クリロノミアだったか?あれは凄まじい効果を発揮していた。 部下である兵達も異常な強さだった。 …俺のことだ、交渉も降伏も許さず、逃げ場など与えず、確実に仕留める策を練ったそうだな。 死体が見つかるまでは攻撃を止めないと。 」 軍師であるオデュッセウスが次に敵軍がどのように動くか予測計算し、そして徹底的に勝利のため手を尽くすことは当然である。 事実、異聞帯のオデュッセウスはそうだった。 ラミアで包囲され完全に逃げ場を無くしたシャドウ・ボーダーに向けて、アルテミスの矢を放った。 それだけではない。 確実に死んだのか、残留物の確認まで行うほどの徹底っぷりだった。 あの猛攻から逃れたのはまさに奇跡としか言えないだろう。 「俺が不甲斐ないばかりに本当にすまなかった。 あの海にいた全ての者に心から謝罪を、そして…俺を倒してくれたことに感謝を。 …ただ、それが言いたかった。 ありがとう、イアソン。 我が従兄弟殿」 今まで回覧板に目を向けていたイアソンが顔をあげると、ひどく優しい顔で頬笑むオデュッセウスがそこに居たため思わず舌打ちをした。 勝手に謝って勝手に満足しているような様がひどく気に入らなくて、段々と腹が立ってきたのだ。 「なーにが『ありがとう、イアソン。 こっちはマジで大変だったんだぞ!そもそもオレだってあんなことしたくなかったわ!」 頬杖をついて思いっきり指を指すと、急に声を大きくしたイアソンの勢いに少し驚いたオデュッセウスが何か言おうとしたが、すかさず先制をとった。 「オレもな、元々はあんなことやるつもりはなかったんだ!ヘラクレス…失った友を想いながら酒飲んで、いつか来る消滅の瞬間を穏やかに待っていた。 それなのにコルデーがマスターを連れてきちまったもんだから全てが台無しだ!おかげで戦闘に駆り出される羽目になった!オレは前線になんか出たくなかったっつーの!怖いし痛いし最悪だったわ!」 「そ、そうだったのか…」 「そうだよ!ああなったのは成り行きで!異聞帯でのお前が何しようとどうでも良い話になるはずだった…ん?そういえば、コルデーを召喚したのはお前だったよな?」 「あ、ああ、俺自身ではなく異聞帯の俺だが…」 たじろぐオデュッセウスを見て、今度はニヤリとするイアソン。 コロコロと変わる表情は、まるでいたずら好きの幼い子供のようだ。 「ハッハッハ!コルデーも大概役立たずだったが酒のつまみの腕は悪くなかったし、お前を仕留めたのもあいつだ、まあ良い働きをした。 しかし自分が召喚したサーヴァントに不意を突かれるとは、かのトロイア戦争の軍師殿も随分詰めが甘いんじゃないのか?」 皮肉たっぷりの言葉に、オデュッセウスは楽しそうに笑って答えた。 「はは、そうかもしれない。 なんせ俺はトロイア戦争と冒険の記憶…即ち宝具とペーネロペーの事は渡さなかったからな」 「…ふん、やはりか」 頷いて指を組みながら落ち着いた、されど力強い口調で言葉を続ける。 「俺と言う英雄を語るにはトロイア戦争に終止符を打った木馬、そして冒険…ペーネロペーの元へ帰るための愛と諦めない強い意志。 それが不可欠だ。 あえてそれらを渡さないことで、『機械的なただの軍師オデュッセウス』としての俺が出来上がったはずだ。 」 トロイの木馬と愛する妻、ペーネロペー。 オデュッセウスには欠くことが出来ないこの2つの大きな軸を、彼は異聞帯の自分に与えなかった。 そうすることで異聞帯のオデュッセウスは完全に無自覚のまま、制限されていた知識と情報のみで行動するしかなかった。 汎人類史のオデュッセウスがそうなるよう仕向けたとも知らずに。 更に彼は『神の命令を遂行すること』が動力となっていた。 そんな異聞帯の己とは対に、本来のオデュッセウスの動力はペーネロペーへの『愛』。 それは神の側にいただけでは得ることのできない、人間が成し得るひとつの奇跡。 「愛、ねぇ」 コーヒーを口に運ぼうとして、その手が止まり「まあ確かに言ってたな。 愛した者がどうとか。 オレはそのへんはどうでも良いが、渡した情報を制限したことは誉めてやる」 ぐいっと紙コップを傾け一気に飲み干し、タン、と机の上に置いてオデュッセウスと向き合う。 従兄弟同士だが、こうしてちゃんと互いの顔をしっかり見るのは初めてだった。 「宝具を渡さなかったのは重畳だ。 仮に宝具まで持っていたらあっという間にオレ達はやられていただろうよ。 自分自身を嵌めるとは中々性悪なやり方だがな」 エメラルドグリーンの瞳をした男が言えば、 「ペーネロペーのことは例え手足を引きちぎられようが、霊核を貫かれようが渡す気は無かった。 彼女の存在が俺をここまで引き上げてくれているのだから」 琥珀色の瞳をした男が言う。 お互いに何を重要視しているのか食い違っていることを理解していながら、イアソンは無機質な声で言った。 「愛の力こそ全て!ってか」 「勿論だ」 オデュッセウスが大きく頷く。 「……それは大層なこった」 面倒そうな顔をするイアソンを見て、オデュッセウスは困ったような笑みになる。 「お前もお前なりの事情があるのだろう。 そこに俺がとやかく言う資格は無いし、触れることも止めておこう。 だが…そうだな」 カタリと席を立って、イアソンの肩に手を置くオデュッセウスが優しい声色で言う。 「あの海でのお前は、誰が見ても素晴らしい英雄だった。 よくマスターを守ってくれた」 肩に乗せられた僅かな重みと労いの言葉に「…本来のではないとは言え、アルゴノーツだぞ。 オレの船でオレの仲間だ、出来て当然だろ」と、照れた顔を見られるのが気に入らない!と言わんばかりに顔を背けるイアソンの反応に、オデュッセウスは柔らかく目を細めた。 口に出して笑っては、この金髪の男は拗ねてしまうから。 「そうだな。 今度、酒でも酌み交わさないか。 祖父や父から聞いた、生前のアルゴー号の話も船長である貴殿から聞いてみたいものだ」 「オレが暇になったらな。 ああそうだ、話を聞いてやった礼に、これ。 書く気は無いか?」 イアソンからひょいと差し出されたセイバー回覧板。 オデュッセウスはそれを手にする…こともなく、鋭い目付きをして溜め息をつく。 「駄目だ。 俺はライダークラスであるし、そも、これはお前に課されたものだろう。 お前がやらなくては意味がないぞ」 穏やかでいて厳しい態度はイアソンを思ってのことだが、本人は面倒そうにうなだれた。 「…やっぱ駄目か…ちくしょう、オレは知恵と勇気が武器なんだ、鍛練など他のセイバークラスの奴等だけでやってくれ…オレは後ろでサポートしてやるから…」 ぶつぶつと文句を言いながら嫌々サインをする男に向けてオデュッセウスはぽつりと一言呟いたがそれは彼の耳に届くことは無く、ただ心からうだうだと文句を垂れていた。 「仕方ない、仕方ないからサインしてやるか…ああ嫌だなあ…助けてヘラクレス…」 「…フッお前ならば、多少の荒波程度どうってことあるまい?少なくとも俺は、そう信じている」 「はいはい、そういうの良いから」 イアソンも席を立ち、空になった紙コップをポイと放り投げる。 うまくゴミ箱に入ったのを確認してから回覧板を手に取り、鋼鉄スーツの男に向けて言った。 「オデュッセウス。 お前ならいつでも歓迎するぞ、我がアルゴノーツにな」 それを聞いて一瞬嬉しそうな顔をするが、目を伏せ首を横に振った。 「…有難い申し出だが遠慮しておこう。 俺は海神ポセイドンの怒りを買った男だ」 「げっ!そうだったな…まあ良い。 カルデアにいるからには従兄弟のよしみとして仲良くやっていこうじゃないか」 「ああ。 だが鍛練から逃げたり、悪戯が過ぎるならば注意させてもらうぞ」 「はあ?お前はオレの保護者か!オレより年下のくせして!」 「保護者ではない。 従兄弟のよしみ、というやつだな」 そんなやり取りをしながら、二人は並んで食堂を後にした。 『貴殿に敬意を、英雄イアソン』.

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