荒れ地のホーシン。 イスラエルの民よ聞け。われわれの神は単一です。

イスラエルの民よ聞け。われわれの神は単一です。

荒れ地のホーシン

2回戦が始まるまであと30分ほど。 丁度、昼になったのでレムが作ってくれた弁当を食べていた。 美味い。 ロズワール邸にいた時にもレムは作ってくれていたが、こういうサンドウィッチ系は初めてだ。 「デザートもありますよ、ヒキガヤ君」 「お、サンキュー・・・美味い、美味いよレム。 マジで一生養ってくれない?」 「プロポーズは別の人にお願いします」 普通にフラれたよ俺。 「次も頑張ってください。 ・・・ところで、どうしてベアトリス様を出さなかったのですか?」 「準決勝までは俺だけでいけると思う。 それに、トーナメント表見てみたらラインハルトとユリウスのどちらかは決勝で当たるっぽいし。 そこまで温存させておきたいんだよな」 ベアトリスにはあの2人に特大魔力をぶつけてもらうためにお願いしているし、エキドナには未来観測の制度を上げるよう頼んでいる。 「ちょっと、売店でなんか買って来るわ。 なんか欲しいものあるか?」 「では、チョコバノノで」 「・・・なんて?」 「チョコバノノです。 皮を剥いた黄色の細い果物にチョコをかけた物です」 この世界ではバナナはバノノと呼ぶらしい。 「そう・・・俺の地元ではバナナって言うんだよな」 「呼び方は、そちらの方がいいかもしれませんね」 「そうだな・・・よし、ちょっと行って来る」 「マジでバナナだ・・・」 「なんだよ兄ちゃん、そいつはバノノだよ。 ほれ、お釣り。 銅貨3枚」 「おお、悪い」 袋に入っているチョコバノノと、銅貨を同時に受け取る。 「あーざーしたー」 適当なお礼を背中に浴びながら、その場を後にする。 ここら辺では武道会はお祭りのようなものらしく、会場には大勢の人がいる。 「らっしゃーい!らっしゃーい!・・・お、そこにいるのは・・・ヒキガヤ君やないの?」 不意に、大阪弁の女性の声が聞こえてきた。 横を見ると、 「アナスタシア・ホーシン・・・」 彼女は王選候補者の1人。 この世界での伝説、荒れ地のホーシンという商人の名前を語っている人だ。 なんで語ってるかっていると、この人の商人としての実力は凄まじく、ただの普通の会社を王国の経済の一角を受け持つ会社へと発展させたので、ホーシンの再来と言われた。 よって、彼の名前を彼女は借りているらしい。 「そう警戒せんといてや。 うちらは今回、ユリウスの応援と小遣い稼ぎに来とるだけなんよ」 アナスタシアは・・・屋根に『大好き焼き』と書かれた屋台の下にいた。 頭にはバンダナを巻いている。 「大好き焼きって何?」 「カララギで有名な食べ物なんよ。 ホーシンが自国から持ち出したらしいんやな」 ・・・まさか、ホーシンって俺と同じ異世界人なんじゃないの? 「・・・俺の地元じゃ、お好み焼きっていうのがあるんだよな」 「その名前、良いと思うわぁ。 他にもあるから是非、買っていって?」 大好き焼きの横には、京都や大阪にありそうな食べ物ばかりが並んでいる。 「じゃあ、この大好き焼きとどら焼きを2つずつ」 「はいよ。 リカード!」 「了解やでお嬢!」 屋台の奥には、リカードと呼ばれた狼のような獣人がいる。 「ねぇ、ヒキガヤ君」 「・・・なんだよ」 「焼きあがるまで時間があるんやけど・・・少し、話さん?」 アナスタシアの目は、先ほどと雰囲気が変わっている。 「世間話、とかですかね?」 「うんうん、そういうの。 クルシュさんのとこでは上手くやってる?」 俺がカルステン家で世話になってる情報を、この人はすでに持ち合わせているのか・・・。 「ああ、そりゃあもう。 いっつも美味い飯ばっか食わせてもらってるよ」 「フゥン、結構な優遇措置なんやね。 それじゃ「こっちからもいいか?」ええよ、なに?」 「じゃあ、遠慮なく・・・周りにいる人たちは全員あんたの部下か?」 ピクリと、アナスタシアの体が震える。 すると、周りから俺に向けての視線が増える。 「これに気づくなんて、ヒキガヤ君で何人目なんやろうね。 へータロー」 「片手で数えるくらいしかいなかったと思います、お嬢」 彼女の横には、へータローという猫耳の背が低い少年がいつの間にかいた。 「祭で気分が浮いてる思うて話しかけてみたけど、肝が座ってるんやね。 ヒキガヤ君」 「あいにく、その点に関してはうちの主人に何度も言われてるんでね」 睨み合いが続く。 おそらく、周りにいるやつが一斉にかかって来たら俺は太刀打ちできないであろう。 だが、いざとなれば今の間合い、確実にアナスタシアの首を落とせる距離だ。 故に、膠着状態は続く。 「いつぐらいから気づいとったの?」 「そうだなぁ・・・リカードって呼ばれた男を見てからかな。 俺の後ろのやつとアイコンタクトをしてた気がしてね」 「どんだけ感がいいの?君」 すごすぎて呆れるわぁと、アナスタシアは両手を上げる。 すると、周りの人たちも警戒を解く。 「はいこれ。 ご注文の品ね」 「お、おう。 どうも」 大好き焼きとどら焼きを受け取る。 「ユリウスの次くらいに応援しといたるわ、ヒキガヤ君」 「そりゃありがとう。 もし当たったら手加減しないでくれと、ユリウスに伝えといてください」 そうして、俺はレムのところへと戻った。

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除草剤にはどんな種類がある?おすすめの選び方をご紹介します!

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「君が持つ特性、『死に戻り』はすさまじい権能だ。 その有用さが、君は本当の意味で理解できていない。 だって、そうだろう? 本来、ある物事への結果というものは、一つの結果が出てしまったらそこから動かせないんだ。 結果が出るまでの過程でならば、その結果がどうなるかについての仮説は様々なものが立てられる。 こういったアプローチをすれば、あるいはこういう条件にしてみれば、様々な仮説や検証は可能だ。 けれど、実際にその結果を出そうと実験に臨むとなれば、結果も試せる仮説も検証も、一つに集約されざるを得ない。 まったく、本当の意味でまったく同じ条件を作り出すことは不可能なんだ。 どんなに条件を整えたとしても、その時点とまったく同じ条件は絶対に作り出せない。 『世界の記憶』を持つボクには、その答えを『知る』手段は確かにあるさ、あるとも。 あるけれど、それを使うことを、用いることをボクはよしとしない。 ボクは『知りたい』んであって、『知っていたい』わけじゃない。 ひどく矛盾を生む、ボクにとっては忌むべき物体であるといえるね。 話がそれそうだから本題に戻すけれど……そう、そんなボクたち、あるべき結果を一つのものとしか受け入れられない、観測手段を一つしか持たないボクたちからすれば、君という存在は、その権能は喉から手が出るほど欲しいものなんだ。 これを目の前にして、あらゆることを試さずにいられるだろうか。 もちろん、ボクとしても決して君にそれを強要するつもりなんてない。 あくまで、君は君の目的のために、その『死に戻り』を大いに利用するべきだ。 ボクもまた、君が求める未来へ辿り着くために最善を尽くそう。 そして、その過程でできるならボク自身の好奇心を満たすことにも大いに貢献してもらいたい。 これぐらいは望んでも罰は当たらないはずだ。 君は答えを見られる。 ボクは好奇心を満たせる。 互いの利害は一致している。 ボクだって答えを知っているわけではないから、わざと間違った選択肢に君を誘導して、その上で惨たらしい結末を迎えるような真似はできるはずもない。 直面する問題に対して、最初から正しい答えを持たないという意味ではボクと君はあくまで対等だ。 共に同じ問題に悩み、足掻き、答えを出そうともがくという意味では正しく同志であるというべきだろう。 そのことについてはボクは恥じることなくはっきりと断言できる。 検証する手段が増える、という意味でボクは君をとても好意的に思っているから、君を無碍にするような真似は絶対にしないと誓おう。 もちろん、答えが出ない問題に直面して、ボクの協力があったとしても簡単には乗り越えられない事態も当然あり得るだろう。 知識の面で力を貸すことができても、ボクは決して現実に干渉できるわけではない。 立ちはだかる障害が肉体的な、物理的な力を必要とする問題だった場合、ボクは君の助けになることはできない。 幾度も幾度も、あるいは数百、数千と君は心と体を砕かれるかもしれない。 もしもそうなったとしても、ボクは君の心のケアを行っていきたいと本心から思っている。 そこには君という有用な存在を失いたくないという探究心からなる感情が一片も混じらないとは断言できない。 けれど、君という存在を好ましく思って、君の力になりたいとそう思う気持ちがあるのも本当なんだ。 だから悪いようには思ってもらいたくない。 繰り返しになってしまうが、ボクは君の目的に対して有用な存在だと胸を張れる。 そう、ボクがボクの好奇心といった強欲を満たすために、君の存在をある意味では利用しようと考えるのと同じように、君もまたボクという存在を君の『最善の未来へ至る』という目的のために利用したらいい。 そうやって都合のいい女として、君に扱われるのもボクとしては本望だ。 それで君がやる気になってくれるというのなら、ボクは喜んでボクという存在を捧げよう。 貧相な体ですでに死者であるこの身を、君が望んでくれるかは別としてだけどね。 おっと、こんなことを言っては君の思い人に悪いかな。 そう君が必ず助け出すと、守ってみせると、心で誓い行動で示している少女たちだ。 二人に対して、そんな強い感情を抱く君の心のありように対するボクの考えはこの場では述べないこととして、しかし純粋に君の前に立ちはだかる壁の高さは想像を絶するものであると断言しよう。 現状、すでにわかっている障害だけでどれだけ君の手に負えないものが乱立していることか。 それらを一人で乗り越えようとする君の覚悟は貴く、そしてあまりにも悲愴なものだ。 ボクがそんな君の道筋の力になりたい、なれればと思う気持ちにも決して偽りはない。 そして、君はボクのそんな気持ちを利用するべきなんだ。 君は、君が持ちえる全てを、君が利用できる全てを利用して、それだけのことをして絆を結んだ人々を助けなくてはならない。 それが君が君自身に誓った誓いで、必要なことであると苦痛の道のりの上で割り切った信念じゃないか。 だからボクは君に問う、君に重ねる、君を想おう。 君が自分の命を使い捨てて、それで歩いてきた道のりのことは皮肉にもつい今、第二の『試練』という形で証明された。 あるいはあの『試練』は、君にこれまで歩いてきた道のりを理解させるためにあったんじゃないかとすら錯覚させるほど、必要なものにすら思える。 確かに必要のない、自覚することで心がすり減る類の光景であったことは事実だ。 でも、知らなかった状態と知っている状態ならば、ボクはどんな悲劇的な事実であったとしても後者の方を尊く思いたい。 君はこれまで、そしてこれからも、自分の命を『死に戻り』の対価として差し出し、そして未来を引き寄せる必要があるんだ。 そのために犠牲になるものが、世界が、こういった形で『あるのかもしれない』と心に留め置くことは必要なことだったんだ。 そう、世界の全てに無駄なことなんてものはなく、全ては必要な道行、必要なパズルのピースなんだ。 それを理解するために『試練』はあった。 君が今、こうして足を止めてしまっている理由に、原因にもっともらしい意味をつけて割り切ることが必要なら、こう考えるといい。 そして、ボクは君のその考えを肯定する。 君が前へ進むために必要な力を、ボクが言葉で与えられるのならどんな言葉でもかけよう。 それが慰めでも、発破をかけるのでも、愛を囁くのでも、憎悪を掻き立てるものであっても、それが君の力になるのであればボクは躊躇うことなくそれを行使できる。 君はそれを厭うかもしれないが、君のこれからの歩みには必ずボクのような存在の力が必要なんだ。 君がこれから、傷付くことを避けられない孤独の道を歩んでゆくというのなら、その道のりを目を背けることなく一緒に歩ける存在が必ず必要なんだ。 そしてその役割をボクならば、他の誰でもなく、このボクならば何の問題もなく一緒に歩いていくことができる。 繰り返そう、重ねよう、何度だって君に届くように伝えよう。 そして、ボクには君が必要なんだ。 君の存在が、必要なんだ。 ボクの好奇心はもはや、君という存在をなくしては決して満たされない。 君という存在だけが、ボクを満たしてくれる。 ボクに、ボクの決して満たされることのない『強欲』に、きっと満足を与えてくれる。 君の存在はもはやボクの、この閉ざされた世界に住まうボクにとっては欠かせない。 君が誰かの希望でありたいと、世界を切り開くために力を行使するのであれば、ボクという哀れな存在にそのおこぼれをいただくことはできないだろうか。 ボクは君がその温情をボクに傾けてくれるというのなら、この身を、知識を、魂を、捧げることを何ら躊躇いはしない。 だからお願いだ。 ボクを信じてほしい。 こうしてこれまで本心を伝えようとしなかったのは、決して君を騙そうとしたりだとか、隠し立てをしようとしていたわけじゃない。 時期を見計らっていただけだ。 今、この瞬間に本心の欠片を訴えかけていたとしたら、きっと君はボクから離れてしまったことだろう。 ボクにとってそれは耐え難い損失なんだ。 もちろん、それは君にとっても、求める未来を遠ざけるという意味で正しく損失というべきだろう。 いずれ、君は『死に戻り』という特性上、きっと求める未来へ辿り着くことだろう。 けれど、その辿り着ける未来に対し、君が支払う代償は少ない方がいいに決まっている。 ボクは、ボクならばそれを軽減することが可能だ。 最終的に求める結果に辿り着ければいい、などと大目的を理由に小目的を蔑ろにするような、人でなしな考えをするとは誤解しないでほしいんだ。 そのことは認めよう。 けれど、誤魔化しはしない。 もし仮にそんな信頼に背くような行いに手を染めるようなことがあれば、それを隠すようなことだけは絶対にしない。 必ず打ち明ける。 そして、失った信頼に応えられるよう、何度でも君のために力を尽くそう。 どんなことがあっても、必ずボクは君を君が望む最善の未来へ送り出す。 絶対に、絶対にだ。 だからそのために必要な手段であると割り切って、ボクを選んではくれないだろうか。 ボクが君に望み、君に求める要求は契約の際に述べたこと通りだ。 あとは君が、君自身が、欲しいと欲する願いに対してどこまで身を切れるか、という話になってくる。 ボクの覚悟は今述べた通りだ。 あとは、君の覚悟を聞きたい。 君の方こそ、ボクとの契約を交わし、ボクの協力を得て、その上で必ず未来へ辿り着くのだと、その気概があるのだとボクに証明してみせてほしい。 それができてこそ初めて、君は第二の『試練』に打ち勝ったと胸を張って言えるんだ。 第三の『試練』に進み、そしてそれを乗り越えて『聖域』の解放を果たす。 今後、『聖域』と君の思い人、そして大切な人々に降りかかる災厄を思えば、これは越えなくてはならない正しく『試練』なんだ。 それを乗り越える力が、覚悟が君にあるのだと、ボクに教えてほしい。 そしてその上で、ボクを奪って、ボクの知識を利用して、その先にあるものを得ていこう。 ボクが君に望み、君に求め、そして代わりに君に差し出せるものは以上だ。 ボクは真摯に、正直に、全てを打ち明けたつもりだ。 ボクという存在の、好奇心の一端を満たすためにも、ね」 この名言いいね!.

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リゼロ3期(アニメ)全ネタバレ最終回結末!5章水門都市プリステラ編を原作小説で解説!

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2回戦が始まるまであと30分ほど。 丁度、昼になったのでレムが作ってくれた弁当を食べていた。 美味い。 ロズワール邸にいた時にもレムは作ってくれていたが、こういうサンドウィッチ系は初めてだ。 「デザートもありますよ、ヒキガヤ君」 「お、サンキュー・・・美味い、美味いよレム。 マジで一生養ってくれない?」 「プロポーズは別の人にお願いします」 普通にフラれたよ俺。 「次も頑張ってください。 ・・・ところで、どうしてベアトリス様を出さなかったのですか?」 「準決勝までは俺だけでいけると思う。 それに、トーナメント表見てみたらラインハルトとユリウスのどちらかは決勝で当たるっぽいし。 そこまで温存させておきたいんだよな」 ベアトリスにはあの2人に特大魔力をぶつけてもらうためにお願いしているし、エキドナには未来観測の制度を上げるよう頼んでいる。 「ちょっと、売店でなんか買って来るわ。 なんか欲しいものあるか?」 「では、チョコバノノで」 「・・・なんて?」 「チョコバノノです。 皮を剥いた黄色の細い果物にチョコをかけた物です」 この世界ではバナナはバノノと呼ぶらしい。 「そう・・・俺の地元ではバナナって言うんだよな」 「呼び方は、そちらの方がいいかもしれませんね」 「そうだな・・・よし、ちょっと行って来る」 「マジでバナナだ・・・」 「なんだよ兄ちゃん、そいつはバノノだよ。 ほれ、お釣り。 銅貨3枚」 「おお、悪い」 袋に入っているチョコバノノと、銅貨を同時に受け取る。 「あーざーしたー」 適当なお礼を背中に浴びながら、その場を後にする。 ここら辺では武道会はお祭りのようなものらしく、会場には大勢の人がいる。 「らっしゃーい!らっしゃーい!・・・お、そこにいるのは・・・ヒキガヤ君やないの?」 不意に、大阪弁の女性の声が聞こえてきた。 横を見ると、 「アナスタシア・ホーシン・・・」 彼女は王選候補者の1人。 この世界での伝説、荒れ地のホーシンという商人の名前を語っている人だ。 なんで語ってるかっていると、この人の商人としての実力は凄まじく、ただの普通の会社を王国の経済の一角を受け持つ会社へと発展させたので、ホーシンの再来と言われた。 よって、彼の名前を彼女は借りているらしい。 「そう警戒せんといてや。 うちらは今回、ユリウスの応援と小遣い稼ぎに来とるだけなんよ」 アナスタシアは・・・屋根に『大好き焼き』と書かれた屋台の下にいた。 頭にはバンダナを巻いている。 「大好き焼きって何?」 「カララギで有名な食べ物なんよ。 ホーシンが自国から持ち出したらしいんやな」 ・・・まさか、ホーシンって俺と同じ異世界人なんじゃないの? 「・・・俺の地元じゃ、お好み焼きっていうのがあるんだよな」 「その名前、良いと思うわぁ。 他にもあるから是非、買っていって?」 大好き焼きの横には、京都や大阪にありそうな食べ物ばかりが並んでいる。 「じゃあ、この大好き焼きとどら焼きを2つずつ」 「はいよ。 リカード!」 「了解やでお嬢!」 屋台の奥には、リカードと呼ばれた狼のような獣人がいる。 「ねぇ、ヒキガヤ君」 「・・・なんだよ」 「焼きあがるまで時間があるんやけど・・・少し、話さん?」 アナスタシアの目は、先ほどと雰囲気が変わっている。 「世間話、とかですかね?」 「うんうん、そういうの。 クルシュさんのとこでは上手くやってる?」 俺がカルステン家で世話になってる情報を、この人はすでに持ち合わせているのか・・・。 「ああ、そりゃあもう。 いっつも美味い飯ばっか食わせてもらってるよ」 「フゥン、結構な優遇措置なんやね。 それじゃ「こっちからもいいか?」ええよ、なに?」 「じゃあ、遠慮なく・・・周りにいる人たちは全員あんたの部下か?」 ピクリと、アナスタシアの体が震える。 すると、周りから俺に向けての視線が増える。 「これに気づくなんて、ヒキガヤ君で何人目なんやろうね。 へータロー」 「片手で数えるくらいしかいなかったと思います、お嬢」 彼女の横には、へータローという猫耳の背が低い少年がいつの間にかいた。 「祭で気分が浮いてる思うて話しかけてみたけど、肝が座ってるんやね。 ヒキガヤ君」 「あいにく、その点に関してはうちの主人に何度も言われてるんでね」 睨み合いが続く。 おそらく、周りにいるやつが一斉にかかって来たら俺は太刀打ちできないであろう。 だが、いざとなれば今の間合い、確実にアナスタシアの首を落とせる距離だ。 故に、膠着状態は続く。 「いつぐらいから気づいとったの?」 「そうだなぁ・・・リカードって呼ばれた男を見てからかな。 俺の後ろのやつとアイコンタクトをしてた気がしてね」 「どんだけ感がいいの?君」 すごすぎて呆れるわぁと、アナスタシアは両手を上げる。 すると、周りの人たちも警戒を解く。 「はいこれ。 ご注文の品ね」 「お、おう。 どうも」 大好き焼きとどら焼きを受け取る。 「ユリウスの次くらいに応援しといたるわ、ヒキガヤ君」 「そりゃありがとう。 もし当たったら手加減しないでくれと、ユリウスに伝えといてください」 そうして、俺はレムのところへと戻った。

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